微細な構造に伴う光近接場は、物質中の電荷が本来伴っている近接場電磁場が、構造の境界の制約によってあらわになるものであって、空間の各点におけるその強度は境界の幾何学的形状に依存する。一方で、光を含む交流電磁場の近接場を発生させるには、系の外部より伝搬波の形でエネルギーを注入する必要があり、この効率が全体の強度となって現れる。金属は伝導電子の性質として、形成する近接場(縦電場)の面でも、伝搬光との相互作用(横電場)の面でも有利であり、強いエネルギー局在を発生させることができる。孤立系に対し光の周波数でこのようなエネルギー局在を設計する場合、一般的には上述の要素に加えて、縦電場を通じた構造共鳴を導入してさらなる増強をはかる。以上のように状況を整理すると、構造の形状は3つの機能(外部からのエネルギーを受けるアンテナ、それを蓄える共鳴体、圧縮する局所構造)を同時に果たすが、これらは独立には設計できないなめ、電場増強度などを主な指標として経験的な開拓が進められてきた。そこで得られた知見は、理想的な構造から遠からずであろうと考えられるが、ナノスケールの電磁場で起こっている現象を工学的に解析・設計するモデルが必要であると考え、考察・検討を進めた。現状ではまだ非常に荒削りだが、2つの要素が重要であると考えられることが分った。1つは、これらの系の振る舞いでは、電子であるか光であるかという担体の区別よりも、それが共鳴体として振舞っているか伝搬波として振舞っているかという状態の区別のほうが重要そうであるということである(共鳴子-伝搬子)。そこで共鳴子と共鳴子が伝搬子を通して通信しているといった描像をもとに検討をすすめた。もう1つは、元来は波動が主な関心事であったため、共鳴子の影響を伝播子に繰り込む形でモデルが整理されてきたと考えることができるが、近接場が主役となる場面では、むしろ共鳴子に伝搬子の効果を繰り込むことが重要そうであるということが分った。
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