研究概要 |
金属ナノ構造を用いた蛍光増強の場合,励起分子が金属表面の極く近傍に位置するとき,エネルギー移動によって蛍光が失活するという難点があった.本研究は,そのような難点を克服し,蛍光増強の新しい場を提供するため,非金属ナノ構造による失活なしの蛍光増強を実現することを目的としている. Mie散乱の理論から導かれる近接場増強度を,種々の物質の球形粒子について見積もった結果から,半導体のGaP及びSi微粒子が高い増強度を示す可能性があることが示唆されている.本年度は,ガス中蒸発法により作成されるGaP微粒子層上での発光増強現象を詳しく調べるとともに,新たにSi微粒子層での発光増強の実験を試みた.昨年度までは,発光層としてrhodamine B分子を用いていたが,今年度はAlq_3層も加え,発光寿命測定も行った. GaP微粒子層上のrohdamine B分子では,発光層の膜厚を薄くするにつれ劇的に増加する発光増強が観測されたが,それと同じ傾向がSi微粒子層上でも観測された.ただ,GaP微粒子層上では発光増強度は最大で140倍にも達したが,Si微粒子上で増強度は約1桁小さい値にとどまった.電子顕微鏡観察の結果からは,今回得られたSi微粒子の平均サイズが60nm程度と小さく,大きい増強度を得るためにはもっとサイズの大きい粒子を作製する必要があることが分かった.Alq_3を用いた発光寿命の測定からは,非金属微粒子上では多少の発光のクエンチはあるものの,金属微粒子上に比較するとクエンチの度合いは圧倒的に小さいことが判明した.
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