1.GaAs基板上の金ダイマーにおける電界増強効果を用いた光カー効果についての検討 FDTDシミュレーションでギャップ直下のGaAs内の電界増強度を計算した。GaAsの光吸収のために、近赤外波長域における電界増強度は10~20倍程度しか無く、スペクトル半値幅も100~数100nmと広くなり、波長1μm近辺で電界増強度の変調を行うためには、比誘電率実部だと1程度の変化が必要であることが分かった。 2.KTP基板上の金ダイマーにおける電界増強効果を用いた第二高調波発生(SHG)の実験観測 昨年度KTP上に配置された金ナノダイマー構造を、拡大し分光することが可能な光学系を構築したが、KTPは複屈折性を持つために焦点が合わず、複数のダイマーで生じるSHGの信号しか観測できなかった。そこで複屈折基板越しでも焦点を合わせられるようにシリンドリカルレンズを用いた補正方法を考案し、金ダイマーで生じるSHG信号を単一構造で得ることができるようになった。入射波長820nmのパルスレーザ光に対し、その金ブロックダイマーで双極子モード及び四重極子モードが励起される金ブロックサイズ(それぞれ100nmと180nm)でSH波強度の極大が見られた。 観測されるSH波には、(Case 1)金ダイマーのギャップの増強電界によって生じるSH波(ハイパーレイリー散乱)と、(Case 2)金ダイマーで散乱した基本波から生じるSH波があると考えられる。FDTDシミュレーションで予測される電界増強度と線形散乱光スペクトル実験結果を用いて2種類のSH波の比を計算してみた。その結果、100nmのブロックサイズの金ダイマーを用いると、Case 1によるSH波強度はCase 2に比べ約6倍大きく、単位体積あたりに換算すると10^6倍にもなることが分かった。局所的なSHGには金属ギャップの増強電場が有効であることが示された。
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