研究概要 |
本研究課題では,ボトムアップおよびトップダウン方式により作成した金ナノ構造体をベースとした光-分子強結合反応場を用いて,近赤外蛍光の強度に及ぼす影響について検討し,蛍光量子収率の低い色素分子の蛍光増強手段としての可能性、具体化、定量化の検討を目的とした.光-分子強結合場で蛍光放射速度定数を制御できるかについて明らかにする.今年度は(1)薄膜系での高分子交互積層法による光-分子強結合反応場の作製および(2)金属あるいは高分子ナノ構造体を利用した近赤外励起蛍光の検討を中心に検討を行った. (1) では,金ナノロッド(AuNRs)を含む光-分子強結合反応場を交互積層法により構築し、近赤外蛍光に対する効果を検討した.この系の蛍光スペクトルを測定したところ,時間の経過とともに蛍光強度が減衰することが観測された.AhNRs存在下では,色素だけの場合に比べて蛍光強度減衰が速くなった.これはAuNRsにより励起光の電場が増強されて光劣化が加速されたことを強く示唆している.このことは,AuNRsによる光-分子強結合反応場効果発現の一つと考えられる. 次に(2)では三澤グループで作成された金ナノアレイを用いて近赤外光励起による蛍光の検討を行った.二光子吸収色素を含有する高分子薄膜を金ナノアレイ上へ塗布した系を構築し,定常キセノンランプによる二光子励起蛍光の観測を試みた.金ナノアレイ上の色素の近赤外励起(720nm付近)により,可視光領域に色素の蛍光あるいは金の発光に類似したスペクトルが観測された.詳細な検討の結果,これは分光器からの微弱な二次光による金ナノアレイの一光子励起発光であることがわかった.また,蛍光増強のを示すデータが得られ始めており,次年度に詳細を検討する.
|