本研究では、金のナノ粒子・ナノロッド-色素複合系でのプラズモン誘起光化学反応を研究する目的で、ジヒドロキシ脂肪酸由来の樹状分子デンドロンのカルボン酸末端側にチオール基を導入した表面修飾剤を合成し、金ナノ粒子や金ナノロッド合成の分散・安定化剤として有効であることを見出した。通常金ナノ粒子を調製する場合、ナノ粒子を凝集から保護するために界面活性剤が用いられているが、生成した金ナノ粒子を機能性物質として応用する際、界面活性剤を除去してから金属表面の修飾を行わなければならないため効率が悪いとされていた。しかしながら、本研究で用いた樹状分子デンドロンは、そのような欠点を克服したのみならず、金ナノ粒子上での分子間光化学反応が極めてスムースに進行することをピレンやCuフタロシアニンの蛍光消光実験からはじめて見出した。ジヒドロキシ脂肪酸を出発物質として、末端にチオール基を有する樹状分子(デンドロン)は金ナノ粒子上に強く結合して安定に存在していることがFT-IRASや吸収スペクトルの結果から示された。このデンドロンが金ナノ粒子の分散安定化剤として有効に作用すること、さらには金ナノロッドのアスペクト比がデンドロンの濃度の増大に伴い、~5.0まで成長することも確認できた。今後は、アスペクト比の異なる金ナノロッドを用いて種々の金ナノロッド-デンドロン複合系を創製し、プラズモン誘起の電子移動反応を調べ、そのダイナミクスを明らかにしていく。さらにはレーザーアブレーション法を用いて蛍光プローブ-金ナノロッド-デンドロン複合系を創製することで、新たな分子集合体系の反応場が構築できたものと期待され、今後プラズモン誘起電子移動に関する分光研究を展開していく上での有効な反応場となることは間違いない。
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