研究概要 |
金や銀などの金属ナノ粒子表面では、表面プラズモン共鳴による電場増強がおこるため、金属表面付近の分子のみに選択的に強い電場を与えることが知られている。本研究では、a)蛍光性分子を表面プラズモン共鳴による増強電場を用いて効率的に励起させる金属ナノ粒子の性質とb)熱刺激に応答して高分子鎖のコンホメーションを変化させる感熱応答性高分子の性質をあわせもつ機能性高分子を分子設計・合成し、蛍光性分子と金属ナノ粒子との相互作用可能な距離を熱刺激により可逆的に変更可能な光-分子強結合場の構築を目指す。平成21年度は、金ナノ粒子と相互作用可能な新規蛍光性分子として2,5-(ビスベンゾイミダゾール-2-イル)ピラジン誘導体およびピラゾール縮環キノキサリン誘導体を合成しそれらの分光学的特性を評価するとともに、蛍光性分子を連結した感熱応答性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)の金ナノ粒子存在下における蛍光特性を検討し、以下の研究成果を得た。DMSO以外の有機溶媒に対する溶解性が低い2,5-(ビスベンゾイミダゾール-2-イル)ピラジンのベンゾイミダゾール環にアルキル基を導入して溶解性の向上を行った。いずれの誘導体もDMSO中で375nmに吸収極大を、440nmに蛍光極大をもつスペクトルを示し、その蛍光量子収率は0.8~0.9と高い値が維持された。ピラゾール縮環キノキサリン誘導体は470nmに吸収極大を、560nmに蛍光極大を持つスペクトルを示し、その蛍光量子収率は0.4であり、金ナノ粒子による消光およびプラズモン共鳴による蛍光増強を検討するのに有用な蛍光性分子である事を明らかにした。ピラゾール縮環キノキサリンを有するPNIPAMの熱相転移温度および蛍光強度には金ナノ粒子の影響は認められないものの、熱相転移後の蛍光団近傍がわずかに親水的となる事が明らかになった。
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