研究概要 |
電極触媒表面におけるin situ振動分光計測を実現するために、表面増強ラマン散乱(SERS)分光以外にも、表面増強赤外反射吸収分光(SEIRAS)を用いた手法の開発にも注力した。今年度では、Si半円等プリズムの底面にスパッタリングで調製した非常に平坦なAu/Ti膜は、調製直後にはSEIRAによる表面吸着種の振動バンドをほとんど検出できないが、電気化学的な処理を適切に行うことで、サブモノレイヤー量の吸着アニオンや吸着水の振動吸収バンドを明確に検出できるようになった。従来の無電解メッキによる成膜法と比較して、表面構造が(111)面に近い単結晶類似面を構築することができ、より構造の規制された表面での反応計測が可能になった。また、同じく従来利用されてきたAu直接蒸着と比較すると、Ti層の存在により電極表面の安定性が格段に向上し、長時間・多数回電位サイクルでの計測が必要な時間分解分光計測にも応用できる。実際、比較的反応速度が遅いAu表面での酸素還元反応について,酸素飽和溶液中において電位を負方向に掃引すると、還元電流の立ち上がりに同期して中間体と考えられる超酸化物の0-0伸縮振動を観測することができた。一方、SERS計測に関しては、現状ではバルクPtからの信号を計測できてはいない。逆ピラミッドビット構造では、光に誘起される表面プラズモン定在波のモードが限られているので、バルクPtおよびPdからのSERSが既に報告されている球状セグメントボイド(SSV)型のプラズモニック結晶構造よりも増強度が低いことが想定される。そこで、SSV型プラズモニック結晶の調製に取り組み始め、既に数枚の基板調製を済ませている。
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