研究概要 |
電気化学環境下、特に腐食が起こりやすい酸性で貴電位印加状態、において安定な分光信号増強能を有する分光電気化学基板の製作を検討し,プラズモニック結晶基板のデザインとその評価を試みた。具体的には燃料電池電極触媒表面における反応の原子・分子レベルでの解析を目指している。当初、逆ピラミッドピット型プラズモニック結晶により、表面増強ラマン散乱(SERS)活性な基板を製作し、単分子層レベルの感度を有することを示すことができたが、白金を用いたSERS活性基板の構築には至っていない。そこで、表面プラズモンポラリトン(SPP)の伝搬長が白金では非常に短いことを考慮し、金表面のSPPを白金に集約し、白金表面での増強を実現することを検討した。そのためにポリスチレン(PS)球を鋳型とする球状セグメントボイド(SSV)型のプラズモニック結晶を製作することにした。ラピッドコンベクションデポジション法により、金平面基板表面に直径600nmのPS球単粒子層を構築し、その隙間を金メッキにより埋めることで種々の深さを有するAu-SSV基板を製作した。引き続きPS球を保持したまま、Pt電析を行うことでAuボイドの上部にPtリムを構築した。Ptリムの有無やプローブ分子の導入法を変えながらラマン信号計測を行うことで、Auボイド内のSPPをPtリムに集約できることを明らかにした。 一方、プラズモニック結晶構造の裏面から赤外光を入射することで表面増強赤外吸収(SEIRA)分光用基板の製作についても検討していたが、スパッタで調製したAu表面を電気二重層領域で繰り返しサイクルすることでSEIRA活性が間便に得られることを明らかにでき、これを用いてAu電極表面で酸素還元反応(ORR)が起こっている、その場の界面構造を分子レベルで明らかにすることに成功した。
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