申請者は昨年までに、ヘリコバクターピロリCagA組換えタンパク質を用いた構造解析結果からCagAが二つのドメインで構成され、CagA生物活性に重要なC末端領域においては高次構造の存在する一方で、自由度の高い不規則構造も併せて存在していることを明らかにした。また、全長CagAが示す細胞形態変化誘導活性を指標に組換えC末端フラグメントの生物活性を検討し、不規則構造から構成されているC末端フラグメントは細胞形態変化活性を示したことから、CagAは主要な生物活性に重要なEPIYA領域周辺を不定形構造として持つ内因性不規則構造タンパク質であることが強く示唆されていた。そこでNMR法によるC末端フラグメントとCagAの標的分子であるPAR1分子間相互作用の解析を進めた。その結果、PAR1によるMR分子滴定により、CagA C末端フラグメントは標的分子と相互作用することで一定の構造を維持する内因性不規則構造タンパク質であることが明らかとなった。現在、N15/C13ラベルCagA分子を用いたNMR滴定解析を行い、PAR1との相互作用に関わるアミノ酸残基の同定を進めている。一方、CagA N末端フラグメントの結晶構造解析を行い約3.5Aの解析像を得たが、分子構造の詳細を明らかにするには至らなかった。そこで現在、N末端フラグメントのさらなるドメイン構造解析を進め、ドメイン構造情報に基づいた複数の欠失変異体を作成し結晶化に成功した。個々の欠失変異体フラグメントのX線構造解析を進めている。
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