公募研究
寄生虫感染症の多くは、終宿主以外の動物や自由生活世代を経るなど、その生活環において複数の発生ステージを持つ。その際、寄生虫は移行に伴う環境変化を刺激として、ステージの切り替え(トランジション)を行なっていると考えられる。寄生性線虫であるフィラリアの生活環は、媒介昆虫(蚊)と哺乳動物宿主の二つの動物ステージを経て完結する。この際、蚊-宿主間の移行に伴う温度変化の乗り越え(適応)システムを解明するため、犬フィラリア(Dirofilariaimmitis)の第3期幼虫(L3)における脱皮機構をモデルとして解析した。フィラリアの脱皮をin vitroで再現し、温度(37℃)と栄養環境め二つが蚊から宿主への移行時におけるフィラリア発育の重要な刺激因子であることを見出した。cDNAサブトラクション法を用いて温度変化前後での遺伝子発現を比較したところ、クチクラ関連因子(cut-1)やシステインプロテアーゼであるカテプシン-L等が単離された。これらの遺伝子のノックダウンによりL3の脱皮が抑制されたことから、寄生性線虫であるフィラリアは、温度変化に対する適応機構とともに、それを刺激としてライフサイクルを促進する遺伝子制御メカニズムを有することが示された。
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Parasites & Vectors
巻: 2 ページ: e15
Cell Host & Microbe
巻: 6 ページ: 244-252