宿主側のGPIアンカーがトキソプラズマ感染に及ぼす影響を調べるため、GPIアンカー生合成能欠失変異CHO細胞における原虫への感受性を野生株と比較した。その結果、変異株は野生株に対して有意に感受性が上昇していた。また野生株と変異株では、原虫の宿主細胞への侵入過程及び感染前期の増殖においては差が認められず、感染後期の増殖のみに差が認められた。また、宿主細胞からの脱出の過程にも差は認められなかった。これらのことから、宿主のGPIアンカーあるいはGPIアンカー型蛋白質が、原虫の増殖のうち後期の増殖のみを特異的に阻害している可能性が示唆ちれた。 トキソプラズマ原虫は宿主細胞内での増殖の際、自身の周囲に宿主のミトコンドリアやERをリクルートしてくるという現象が知られている。そこでこれらの細胞内における原虫の宿主ミトコンドリア・リクルート能を比較したところ、明らかに変異株内でのリクルートが増加していた。次にミトコンドリアやERのリクルートメントの原因であると考えられているロプトリー蛋白質に着目した。ロプトリー蛋白質は原虫の宿主侵入に先立ら、独立した小胞(evacuole)として原虫から宿主細胞に注入されることが知られている。原虫によるROP1及びROP16を含むevacuole形成能を宿主のGPIの有無で比較したところ、GPI生合成能欠失変異株では明らかにevacuoleの形成が過剰になっていた。(投稿準備中)。現在より詳細な解析を行っている。 また、トキソプラズマのアピコプラストへのタンパク質輸送機構を解析した結果、自由生活性の二次植物であるクロララクニオン藻類と共通のメカコズムの存在が示唆された(PNAS 2009)。現在詳細を検討中である。
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