研究概要 |
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(C.glabrata)などは、人体内に常在する唯一の真菌であり、また重篤な日和見感染症を起こす真菌でもある。病原性については未解明な点が多く、複数の因子が関与すると考えられており、生育必須因子、常在因子を含めて病原因子とするコンセンサスがある。我々はこのコンセンサスに矛盾を感じているが、異論を唱える根拠が得られていない。そこで、申請者は本研究において、カンジダ・グラブラータの組換え株を用いて生育因子、常在因子、(日和見)感染因子の3つのカテゴリーに分類することにより、カンジダの病原因子の定義を改訂することをめざしている。平成22年度はさらに1,000株の遺伝子欠損株の作製、並びにカイコ感染実験系の導入とマウス腸管常在モデル構築を行った。20遺伝子の各欠損株についてカイコ幼虫を用いた感染実験を行った結果、数株についてカイコの殺傷能力の低下が認められた。その中で乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子CYB2遺伝子の欠損株に着目し、マウス腸管常在実験を行った。その結果、CYB2欠損株では、コントロール株に比べてマウス腸管定着率が1/100に低下した。ほ乳類の腸管では、低酸素でグルコースが枯渇状態にあり、これまでカンジダが腸管でどのような炭素源を利用して定着しているか不明であった。ほ乳類の腸管は乳酸菌等の常在菌によって、乳酸が提供され得る環境下にあると考えられており、CYB2欠損株を用いて得られた結果より、カンジダは腸管内で乳酸を利用していることが支持された。
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