研究概要 |
自然免疫の代表的な受容体群であるToll-like receptor(TLR)ファミリーの中で、細菌のフラジェリンを認識するTLR5が腸管粘膜固有層の樹状細胞に特異的に発現していることを明らかにした。これらの樹状細胞は脾臓の一般的な樹状細胞とことなり、粘膜特異的なIgA産生や自己免疫疾患の発症に密接に関わると言われているTH-17細胞の誘導に関わる。今年度は、この樹状細胞を腸管から単離して、フラジェリン存在下に抗原を取り込ませ、マウスの腹腔内に投与して免疫をした。免疫マウスの腸管では抗原特異的なTh1細胞やTh17細胞が誘導され、抗原の経口投与によりさらに数が増えた。免疫マウスの腸管からTh17細胞を単離してDNAマイクロアレイを行い、ケモカインやケモカイン受容体の発現を調べた。さらに、抗原で再刺激をし、抗原特異的にTh17サイトカインであるIL-17A, IL-17F, IL-22などが産生された。さらに、ネズミチフス菌のフラジェリンを抗原、およびアジュバントとして用いてこの樹状細胞で免疫したところ、フラジェリン特異的なTh17細胞が腸管で誘導できた。この免疫マウスに対して、ネズミチフス菌感染を検討したところ、有為に生存率が伸びた。以上のことから、腸管粘膜固有層による免疫によって、ネズミチフス菌に対する防御免疫が誘導出来ることが明らかになった。
|