研究概要 |
トキソプラズマ原虫T.gondiiがマクロファージや樹状細胞などに感染するとTLR依存的に炎症性サイトカインであるIL-6やIL-12の産生が誘導される。しかしながら、type I T.gondiiの感染はtype IIと異なり、自然免疫担当細胞からの炎症性サイトカインの産生がほとんど認められない。そのメカニズムとしては、type Iやtype III株の感染では抗炎症性転写因子であるStat3が活性化されるが、type II株ではその活性化が著しく阻害されていることが見出された。また、type IIとtype IIIを用いた順遺伝学的解析からROP16というキナーゼがその原因遺伝子の候補として発見された。 本研究ではtype IのROP16欠損原虫を作製し、その表現型を解析した。ROP16欠損原虫の感染によるマクロファージからの炎症性サイトカインの産生は野生型原虫の感染による産生よりも増強していた。また、Stat3の活性化についてはROP16欠損原虫感染では誘導されなかった。従って、ROP16がtype IIでのStat3の活性化不全の原因遺伝子であることが証明された。また、原虫由来のROP16を哺乳動物細胞で強制発現させたところ、Stat3の激しいリン酸化が誘導された。次に、キナーゼ活性中心に変異を有するROP16を作製したところ,Stat3の活性化が消失した。以上のことから、ROP16がトキソプラズマ原虫によるStat3の活性化に重要な役割を果たしていることが判明した。
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