マラリア流行地の成人に防御抗体を誘導する原虫抗原を網羅的に同定することができれば、新規マラリアワクチン開発の突破口となる。しかし、大腸菌等既存の方法では熱帯熱マラリア原虫組換えタンパク質の発現は困難なことが報告されていた。申請者らは、新規熱帯熱マラリアワクチン候補抗原を同定するため、ワクチンの標的と予測されているメロゾイト期の完全長cDNAライブラリーからこれまでに1500個余りの独立したcDNAクローンを得た。さらに熱帯熱マラリア原虫の組換えタンパク質発現に優れたコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を応用して、独自の小スケール・ハイスループットな抗原抗体反応検出系を確立した。そこで本研究では、これらの熱帯熱マラリア原虫cDNAからプロテインアレイを作製し、これを用いてタイのマラリア流行地住民血清によって認識される新規抗原のゲノムワイドな探索を行った。 1. コムギ胚芽無細胞系を用いたハイスループットなビオチン化プロテインアレイの作製 メロゾイト期原虫のプロテインアレイを作製するため、完全長cDNAクローンから、コムギ無細胞タンパク質合成法を改変してビオチン化組換えタンパク質をハイスループットに合成出来る系を用いて、ビオチン化組換えタンパク質の合成を行い、熱帯熱マラリア原虫メロゾイト期のタンパク質約1000種類以上小スケールで合成した。 2. アルファ・スクリーン法を用いた新規メロゾイト抗原のスクリーニング 昨年度に確立した高感度、小スケール、ハイスループットな抗原抗体反応測定系を用いて、上記メロゾイト期タンパク質1000種類以上と、マラリア免疫血清約20人分を用いて、新規抗原のスクリーニングを行った。その結果、多くのマラリア免疫血清と反応する抗原タンパク質を同定することに成功した。
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