1.熱帯熱マラリア原虫赤血球期のゲノムワイドなプロテインアレイの免疫スクリーニング試行 約1700種類の熱帯熱マラリア原虫赤血球期cDNAクローンからビオチン化プロテインアレイを作製した。免疫スクリーニングに使用できるか検討するため、マリから入手したヒト免疫血清10名分との反応性を検討した。その結果、少なくとも1種類の血清と反応した抗原が227種類、その内5名分以上の血清と反応した抗原が47種同定された。以上の結果より、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いた熱帯熱マラリア原虫プロテインアレイは、ハイスループット抗原スクリーニングシステムとして利用可能であると考えられた。 2.昨年度同定した新規抗原PfMSPDBL1の性状解析 昨年度にタイの血清を用いて同定した新規抗原分子2種の内、PfMSPDBL1と呼ばれている機能未知分子がマラリア赤血球期ワクチン候補となりうるか、検討した。PfMSPDBL1は一次構造上、既知の赤血球結合ドメインに類似したドメイン(Duffy Binding Like domain)を有する。全長および部分長PfMSPDBL1組換えタンパク質をコムギ胚芽無細胞系により合成し動物抗血清を得た。これら抗血清を用いた間接蛍光抗体法によりPfMSPDBL1のメロゾイト表面への局在が確認された。また、PfMSPDBL1は赤血球表面に結合し、さらに抗PfMSPDBL1抗体は、培養熱帯熱マラリア原虫の赤血球への侵入を阻害することが明らかとなった。以上の結果から、PfMSPDBL1は熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入に重要な役割を果たすこと、さらに新規赤血球期ワクチン候補となる可能性が示唆された。
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