研究概要 |
赤痢アメーバ症は発展途上国における小児下痢症の主要な原因の一つである。申請者らは世界で初めて腸赤痢アメーバ症のモデル動物を確立し、赤痢アメーバの感染成立機構ならびに同症に対する感染防御機構の研究を進めてきた。CBA/Jマウスはヒト同様の病理像を呈し慢性感染に至るが、C57BL/6(B6)など他系統マウスでは感染が成立せず、このマウス系統による感染感受性の差異は、ヒトで認められる赤痢アメーバ感受性の個体差を理解する糸口になると考えられた。本年度は、連鎖解析から見出された第1,2染色体(rs3684370,rs3662211)近傍に存在する定着阻止遺伝子を同定するため、当該領域にのみB6由来の遺伝子を有すCBAマウスの作成に取り組んだ。具体的には100余りのマイクロサテライトを使用した『スピードコンジェニックマウス作成法』により第5世代まで戻し交配を進めた。また同様の方法により、各種免疫関連遺伝子ノックアウトマウスのCBA/Jバックグラウンドへの戻し交配を進めた。さらに腸管寄生性線虫Heligmosomoides polygyrusに感染したマウスでは、杯細胞の過形成と腸管粘液の産生亢進が認めら、このような状態では通常感染が成立しないB6マウスにおいても赤痢アメーバの腸管内定着が認められることも見出した。本知見は赤痢アメーバの腸管内定着機構を解明するための重要な糸口になると考えられる。
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