本研究は、原虫感染に伴う免疫・炎症病変の誘導機構、およびその生理的・病理的意義に関して、サイトカイン産生の観点から新たな検討を加え、その制御機構を解明することを目的とし、1)自然免疫細胞における、CARD9を含むCBM複合体を介した新しい炎症性サイトカイン産生機構の解析とその意義の解明、2)自然免疫細胞が産生するサイトカインによる炎症誘導が獲得免疫の成立に与える影響、3)獲得免疫において産生される、IL-17などの炎症誘導性サイトカインやIL-27などの免疫抑制性サイトカインが、自然免疫・獲得免疫両者に与える影響、の検討を目指した。CARD9を欠損するマウスにおいては、原虫L.major感染に対する初期炎症が減弱していた。引き続くTh1型の獲得免疫は、CARD9に依存せず、正常に分化することが明らかになった。これらにより、CARD9を含むCBM複合体に依存した自然免疫活性化経路は、L.major感染早期における感染部位の炎症誘導に重要な役割を果たしていることが明らかになった。CARD9の上流に位置すると考えられるアダプター分子の候補を同定し、関連遺伝子欠損マウスにおいて比較解析を行うほか、ノックダウン法によりその詳細の検討を行い、また原虫由来の因子を認識する自然免疫受容体の同定を試みている。これらにより、細菌・ウイルス、および真菌に引き続いて、これまで未解明であった原虫に対する自然免疫応答経路が明らかにされつつあり、この経路の活性化などによる新しい抗原虫療法の確立が期待される。
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