研究領域 | 感染現象のマトリックス |
研究課題/領域番号 |
21022039
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
平山 壽哉 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (50050696)
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研究分担者 |
磯本 一 長崎大学, 大学病院, 准教授 (90322304)
山崎 栄樹 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40514708)
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / VacA / 細菌毒素 / 毒性発現 / microRNA / エピジェネティック / PI3K / Akt / 細胞内Ca2+濃度 |
研究概要 |
塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現を制御するエピジェネティック機構の破綻が発癌に重大な役割を担っている。microRNA(miR)は18~25塩基からなるnon-coding RNAで、組織特異的に発現しており、細胞の増殖やアポトーシス、分化に重要な役割を果たしている。H.pylori感染に伴う胃粘膜のmiRの発現変動を解析することは、胃発癌の分子機構の解明に繋がる可能性があり、VacAの影響を解析した。19例のクラスター解析の結果、55種類のmiRがH.pylori感染に伴って有意に変動していた。2種類以外は全てH.pylori感染により発現低下を来していた。35種類のmiRの発現変動はrealtime PCRにより定量できた(25症例、H.pylori陽性12例-陰性13例)。また、6種類のmiRはH.pylori感染の有無を判別可能であった。シドニー分類との対比検討では、miR発現量と活動度や慢性炎症との関連性は明らかでなかったが、2種類のmiRにおいて萎縮度スコアとの有意な相関が認められた。また、菌量スコアとmiR-214発現量の間には負の相関性がみられた。次に精製VacA投与、vacA欠損株、cagPAI欠損株と野生株の比較感染実験の結果から、6種類のmiRはcagPAI依存的に有意な発現低下を来していた、また2種はVacAの存在下で有意に変動していた。cagPAIやvacA遺伝子欠損に影響されず感染自体で発現低下しているmiRもみられた。一方、VacAの新たな毒素活性としてPI3K/Akt経路を活性化し、Aktの下流であるGSK3βをリン酸化し、β-cateninの転写活性を誘導することを見出したが、この活性化経路に関わるVacA受容体は、これまで示した2種のRPTPではなくまた、細胞内Ca2+濃度に依存することが示唆された。
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