本研究では、細胞外増殖性グラム陰性細菌であるビブリオ属病原細菌の感染と宿主炎症応答の分子機構を菌側・宿主側両面から包括的に理解することを目的としている。本年度は、新興感染症病原細菌の一つエロモナス属細菌の感染においてもカスパーゼ-1を介した炎症誘導が認められたことから、そのメカニズムを解析した。各種遺伝子欠損株を作成して解析することにより、エロモナス・ハイドロフィラ感染において、カスパーゼ-1活性化には3種類の細胞傷害性毒素が関与することが明らかになった。一方、これらの細胞傷害性毒素の作用により、いずれの場合もNLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ-1の活性化が誘導されることがNLRP3欠損マクロファージを用いた解析で明らかになった。エロモナス・ベローニの感染では、細胞傷害性毒素がNLRP3を、菌が保有するIII型分泌装置がNLRP3/NLRC4両方の活性化を誘導することが示された。III型分泌装置はNLRC4を活性化すると報告されてきたが、研究代表者の解析によってIII型分泌装置の中にはNLRP3/NLRC4両方を活性化するものがあることが新たにわかった。また、カスパーゼ-1欠損マウス等を用いた感染モデルにおいて、欠損マウスでは腹腔内投与後の菌の臓器内増殖が抑制できないことも判明した。血清中のサイトカイン量を測定した結果、カスパーゼ-1欠損によりIL-18の産生が有意に減少した。したがって、エロモナス・ベローニ感染においてカスパーゼ-1活性化によるIL-18の産生が菌の排除に働くことが示唆された。
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