研究概要 |
C型およびD型に分類される4種の毒素受容体結合ドメイン(Hc)について結晶構造と結合特異性についての解析を試みた。4種のHcのうち、DCモザイク毒素由来のOFD05Hcの立体構造をSe-SAD法にて2.8Aの分解能で決定した。しかし、N末端ドメインのフレキシビリティが高く、良好なモデルを構築することが出来なかった。そこで、N,C末端の各ドメインを別々に調製し、それぞれの構造を分子置換法により決定した上、これらの構造を上記のHcの構造に重ね合わせることにより、全体構造を構築した。明らかになった構造を機知のボツリヌス毒素のHcと比較したところ,本Hcには特徴的な長いループ領域の存在が確認された。このループには硫酸イオンが結合しており、機能発現における重要性が示唆された。また、他のボツリヌス毒素と同様にC末端領域にはポケット構造が存在していた。次に、立体構造をもとに31種類のAla残基置換体とループ領域の欠失変異体を作製し、その受容体結合活性を表面プラズモン共鳴と培養細胞への結合アッセイにより評価した。その結果、ループ領域とポケット周辺への変異導入により、結合活性が著しく減少することが明らかになった。更に、ガングリオシド中に含まれるSialyllactoseとの複合体の結晶構造を3.4Aの分解能で決定した。明らかになった構造において、単糖分子の電子密度が上記のポケット中に確認された。この部位は、他のボツリヌス毒素においてもガングリオシド結合ポケットとして機能することが報告されており、OFD05Hcにおいても同様の機構によりガングリオシドを認識することが示唆された。このことは、変異体解析の結果からも強く裏付けられる。一方、長いループ周辺には有意な電子密度は確認されず、このループが直接ガングリオシドを認識しているかどうか明らかにするためには、より詳細な解析が必要と考えられた。
|