研究領域 | 感染現象のマトリックス |
研究課題/領域番号 |
21022050
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
田口 文広 日本獣医生命科学大学, 獣医学部・獣医感染症学教室, 教授 (30107429)
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研究分担者 |
松山 州徳 国立感染症研究所, ウイルス3部, 室長 (90373399)
氏家 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部・獣医感染症学教室, 助教 (50415478)
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キーワード | コロナウイルス / プロテアーゼ / S蛋白 / 細胞融合 / ウイルス放出 / 細胞融合 |
研究概要 |
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は細胞に感染する時、宿主細胞のプロテアーゼを利用することが知られている。細胞に吸着したウイルスにトリプシンなどのプロテアーゼが作用し、スパイク(S)蛋白が解裂されることにより、直接細胞膜から侵入する。また、プロテアーゼにより感染細胞は融合することも報告されている。プロテアーゼの非存在下では、エンドゾーム経由で感染するが、プロテアーゼ存在下と比べると、感染効率は低い。コロナウイルスの中ではSARS-CoVのみならず多くの種がプロテアーゼ依存性に感染し、細胞融合を引き起こす。その中でも、豚の下痢症ウイルス(PEDV)はプロテアーゼ依存性が高く、トリプシンなどのプロテアーゼが存在しないと感染拡大が極めて弱い。今年度は、PEDV感染におけるプロテアーゼの役割について検討した。トリプシン存在下或いは膜貫通型プロテアーゼTMPRSS2発現Vero細胞では、感染性ウイルス粒子が細胞外に効率よく放出され、プロテアーゼ非存在下と比べ、その感染性は100-1000倍高かった。我々は、トリプシン非存在下のVero細胞とプロテアーゼ阻害剤を加えたTMPRSS2発現細胞では、電子顕微鏡による観察で、ウイルス粒子が細胞表面に付着してクラスターを形成しているが、トリプシン付加により、また、プロテアーゼ阻害剤のないTMPRSS2発現細胞では、細胞表面のウイルス粒子のクラスターは消失していることを観察した。これらのことから、PEDV感染におけるプロテアーゼの役割は、細胞外へのウイルスの放出であり、それは、感染細胞外で細胞膜に付着しているウイルス粒子を細胞膜から剥がすのに重要であることが判明した。今後、どのような細胞分子がウイルスと細胞膜との結合に関与しているのかを検討したい。
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