研究概要 |
ポリオウイルスやエンテロウイルス71(EV71)は中枢神経系で重篤な病変を引き起こすneurotropicなウイルスである。これらのウイルスの感染特異性の成立にはウイルスレセプターのようなウイルスの侵入過程やIFN応答のようなウイルスが細胞内に侵入した後の増殖過程の制御が重要な役割を果たしていると考えられている。これまでEV71に関してはその受容体は同定されていなかったが、我々は今年度Scavengerreceptor B2がEV71の受容体として機能している分子であることを明らかにした。受容体の同定はEV71病原性解明に大きく寄与すると考えられる。またポリオウイルスが神経系と非神経系で大きく増殖効率が異なっている理由はポリオウイルス感染時のIFN応答の違いによって説明しうることを示してきた。その違いを生じさせる原因となっているのはウイルス感染を検知するセンサーではないかと仮定し、ポリオウイルス感染の検知に重要な働きをするセンサーはどれであるかをRIG-I,MDA5,TRIF,MyD88,TLR3ノックアウトマウスを用いて解析した。ポリオウイルス感染時には主に脾臓でIFNが産生されるが、TRIFKOマウス、TLR3KOマウスではIFNαやISGの誘導レベルが大きく低下しており、種々の組織でのウイルス増殖も増し、マウス個体の生存率も低下した。したがってポリオウイルスの感染の検知はTLR3に依存する経路が重要であることが判明した。
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