研究概要 |
導電性高分子を利用する有機イオンポンプの作製プロセスを検討した。基板上にポリスチレンスルホン酸をドープしたpoly (3,4-ethylenedioxythiophene) (PEDOT : PSS)薄膜をパターニングした。イオンポンプ機構を付与するために、電気化学的なリソグラフィー処理により、このPEDOT : PSS薄膜の一部に過酸化領域を形成した。この際、PEDOT : PSS薄膜を流れるオーミック電流を計測することで、過酸化の進行状態をモニタリングした。PEDOT : PSS薄膜の近傍に配置したマイクロ電極で次亜臭素酸の電解生成を開始すると、PEDOT : PSS薄膜を流れるオーミック電流が低下し始め、数分で電流が検出されなくなった。これから、当該領域の電子伝導性が失活し、過酸化領域が形成されたことが確認できる。イオンポンプ機構を付与したPEDOT : PSS薄膜パターンに、微小溶液チャンバーを設置し、デバイスの評価を行った。過酸化領域を挟んだPEDOT : PSS薄膜間に0.8Vを印加し、ソースチャンバーからターゲットチャンバーにカルシウムイオンを輸送した。ターゲットチャンバーへのカルシウムイオンの流入は、蛍光プローブを用いて可視化した。電圧を印加すると、ターゲットチャンバー内の蛍光強度が上昇し始め、過酸化領域を介したカルシウムイオンの輸送が確認できた。また、蛍光強度の変化と印加電荷量の相関も確認された。
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