本年度は、高速AFMを用いてF_1-ATPaseのγサブユニット引き抜き実験とα_3β_3複合体のATP加水分解に伴う構造変化の観察を行った。 γサブユニット引き抜き実験に関しては、まず高速AFMでイメージング中に任意の位置でフォースカーブを計測するシステムを構築した。このシステムを用いて、分子の位置をAFM画像により確認後、フォースカーブを計測することで、その直後にγサブユニットが実際に消失していることかどうかを確認できるようになった。フォースカーブの解析により、引き抜き時にはγサブユニットは殆どアンフォールディングしていないことを示す結果が得られた。また、引き抜きの際の力は約20pNであることが分かった。 α_3β_3複合体の観察に関しては、高速AFMでサブユニットを明瞭に観察することが出来た。観察溶液中にATPを添加することで、6つのサブユニットのうち3つだけがAFM画像で大きな変化が見られた。これはβサブユニットがATP加水分解により構造変化している様子を捉えていると考えている。観察された構造変化はランダムではなく、反時計まわりに順番に生じているように観察され、γサブユニットの反時計回りの回転に関連した構造変化と推測される。また、1個のβサブユニットがAFM探針により破壊された場合、構造変化が生じる頻度が低減することがわかり、この結果はβサブユニットが共同的に構造変化を起こしていることを示唆している。 来年度は、α_3β_3複合体の観察を中心に行い、構造変化の頻度のATP濃度依存性や共同性の有無を明らかにしていく予定である。
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