研究概要 |
本研究ではイネの亜種内で見られる2組の雑種弱勢を材料に研究を行い、1対の雑種弱勢原因遺伝子が出現する原因となった遺伝子の変化を塩基配列のレベルで特定することを目的とした。さらに、2組の雑種弱勢を扱うことで雑種弱勢発現メカニズムの多様性と共通性に対して新しい知見を得ることを目指した。 (1)Agilent 44Kマイクロアレイを用いて日本晴、Jamaica、F_1の間で遺伝子発現を比較したところ、発現が上昇する遺伝子ではcell wall organization or biogenesis (GO:0071554)やresponse to chemical stimulus (GO:0042221)が有意に多く見られ、発現が下降する遺伝子では光合成の光化学反応が起こるチラコイドで働く遺伝子(GO:0009579)が有意に多く含まれていた。 (2)インドのイネ品種P.T.B.10とP.T.B.7の間で見られる雑種弱勢原因遺伝子HWA1, HWA2の高密度連鎖解析を行い、HWA1、HWA2ともに第11染色体のRM27051とRM27068の間約300kbpの範囲に絞り込まれた。このことからHWA1とHWA2は染色体上の位置が極めて近い2つの遺伝子か、あるいは同座の対立遺伝子である可能性が示唆された。連鎖解析の結果は2つの原因遺伝子が対立遺伝子あるいは、重複遺伝子である可能性を示しており、この雑種弱勢がHWC1とHWC2とは異なる様式の相互作用によって生じていると考えられた。
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