26Sプロテアソームは分子量2.5MDaの巨大な蛋白質分解酵素で触媒サブユニットを含む20Sプロテアソームとユビキチン化蛋白質の認識や脱ユビキチン酵素を含む19S複合体により構成されている。26Sプロテアソームを構成する構成因子はほぼ確定したと考えられるが、26Sプロテアソームに一時的に結合する蛋白質や、特殊な状況でのみ相互作用すると思われる蛋白質は未だ数多く未解析のまま残されている。 出芽酵母は真核生物においてポストゲノム解析が最も進んでいる生物であり、網羅的なタンパク質問相互作用の同定が進んでいる。データベース化された結果からプロテアソーAに結合すると思われる機能未知のPic(Proteasome interacting candidate)蛋白質を選択し、タグ化蛋白質の発現系を作製した。この発現系を用いて免疫沈降実験を行い実際にプロテアソームと結合するものを検索した。そのうち最も強く結合が見られたものをPic1と名付けてさらに詳細な解析を行っている。その結果、Pic1は完成した26sプロテアソームには結合しておらず、形成途中のプロテアソームに結合していることが予想された。形成途中のプロテアソームにのみ結合している蛋白質として、プロテアソームの形成を支援するシャペロン蛋白質が知られており、Pic1もプロテアソーム形成シャペロンである可能性を考えている。しかし、Pic1欠損株を作製してその表現型を調べた結果、少なくとも普通の培養条件下においてはプロテアソーム活性が野生型株に比べ低下しておらず、その機能は未だ不明である。 今後、Pic1の解析を続けることで新しいプロテアソーム制御機構が明らかになる可能性がある。
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