進化上保存された非典型カルパインの酵母ホモログCpl1は、アルカリ応答性Rim101経路において、転写因子Rim101をプロテオリシスし活性化する。Rim101プロテオリシスにおける切断点を同定するため、切断部位周辺領域のみを精製用タグに融合し、Rim101高発現による生育阻害効果を排した基質タンパク質を構築し、これを酵母内で大量発現した。切断によって生じたC末端側断片を十分量精製し、そのN末端をプロテインシークエンサーにより決定することに成功した。同定した切断点は、哺乳類の典型カルパインの基質特異性によく一致した配列を有していることを確認した。さらに、同定した切断点付近にアミノ酸置換を導入した一連の変異体を作製し、酵母内での切断効率を比較したところ、切断部位のN末端側2残基目(いわゆるP2部位)の変異で切断が著しく低下し、このことも哺乳類の典型カルパインの基質特異性と類似していた。 また、プロテアーゼ複合体の構成因子であるCpl1-Snf7およびRim20-Snf7の結合は、センサー部を欠損した変異株においても損なわれないことを見出した。基質であるRim101とRim20の結合もセンサー部に依存しなかった。したがって、本経路の活性制御はプロテアーゼ複合体形成の有無のみに依るものではないと結論した。 構成因子に付加した精製用のタグを利用し、酵母からプロテアーゼ複合体を精製し、上記のRim101切断部位周辺領域を有する基質タンパク質を用いたin vitroプロテアーゼ活性アッセイに供したが、典型カルパインの反応条件では切断を確認できなかった。プロテアーゼ複合体の活性化はエンドソーム膜表面で起こると考えられるため、脂質膜小胞を含む反応系を検討する必要がある。
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