公募研究
本研究では、ユビキチン化を介した蛋白質分解による時間的・空間的シグナル伝達制御システムを介して、多様な細胞応答が生み出されるメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的としている。昨年度までに、B細胞の機能制御に関わるサイトカイン受容体CD40や自然免疫受容体TLR4では、それぞれMEKK1キナーゼやTAK1キナーゼのシグナル複合体が形成され、共通に、その複合体構成因子であるユビキチン化酵素c-IAPによるTRAF3アダプター分子のユビキチン化分解が、下流のMAPキナーゼシグナル経路の活性化のタイミングと細胞内局在決定に必須であることを明らかにした。MAPキナーゼとは別なNF-κBシグナル経路には、そのような仕組みは存在せず、この仕組みの有無がMAPキナーゼとNF-κBの2つのシグナル経路の活性化の時間的・空間的な違いを生み出していると考えられた。今年度は、さらにTLR4下流では、TRAF3が上記のような分解関連のK48型ユビキチン化だけでなく、結合型の異なるK63型ユビキチン化修飾されることを見出した。TRAF3がK48型ユビキチン化された場合、TRAF3の分解によって、TAKI→MAPキナーゼ経路が活性化し、最終的にTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの産生が誘導される。一方、TRAF3がK63型ユビキチン化された場合には、TRAF3は分解されるのではなく、別なキナーゼであるTBKIと結合することによって、TBKI→IRF3経路を活性化させ、最終的にIFN-oLやIFN-βなどの産生を誘導する。これらは、それぞれ細菌感染とウイルス感染に抵抗するための経路であり、TRAF3の異なる結合型のユビキチン化修飾によって、同一分子であっても全く異なる機能が発揮されることを本研究では明らかにした。以上のように、シグナル分子のユビキチン化の有無や異なる結合型のユビキチン化修飾によって、シグナルのタイミングや細胞内局在が微妙に調節され、多様な細胞応答が生み出されるものと考えられる。
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