本研究では、これまで不明であったジスルフィド結合形成不全による異常タンパク質の分解や2型糖尿病の大半で認められるアミロイド(アミリン)の分解に関わる因子の網羅的な検索をおこない、分解制御の新たな全子機構の解明と糖尿病発症におけるタンパク質分解系の意義の解明を目指す。具体的には、GFP分子を利用した生細胞でのイメージング技術とRNAiライブラリーによる遺伝学的な手法を利用して、構造異常があるインスリンやアミリンの分解に関わる因子の網羅的な検索を行う。平成21年度は網羅的な探索に必要なレポーターシステムの開発を行った。作製したレポーターシステムを発現する細胞に、様々な小胞体ストレスで刺激を加えて、細胞内でのレポーターの動態を蛍光顕微鏡で観察した。レポーターはストレスの程度や、ユビキチンプロテアソーム分解系の抑制により、細胞内に蓄積、分解などさまざまな応答を示した。これらの知見は、RNAiライブラリーを用いた網羅的な解析を開始するために役立ち、次年度は本格的にRNAiライブラリーによるスクリーニングを行う予定である。本研究により、糖代謝調節におけるタンパク質分解の役割が明らかになれば、これまでの代謝治療薬とは全く異なった創薬標的の開発の可能性が出てくる。糖尿病やメタボリック症候群といった代謝の恒常性の破綻が原因となる疾患の増加が大きな社会問題となっており、本研究での知見はそれらの解決に繋がる基礎的な情報を提供することが期待できる。
|