公募研究
Kspot(Fbxo45は、N末端側にF-boxドメインをC末端側にSPRYドメインをもつF-box型ユビキチンリガーゼ群の新しいメンバーであり、神経系にのみ発現することが示されている。ラット海馬神経細胞において、シナプス形成後Fbxo45を強制発現させてAMPA受容体の微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)を測定した結果、mEPSCの頻度が40%の減少を示した。Fbxo45が神経伝達物質の放出機構に関与する可能性を疑い、細胞外のCa^<2+>濃度を2mMから10mMに上昇させて実験したところ、Fbxo45強制発現によるmEPSC頻度の減少が観察されなくなった。これら結果は、成熟したシナプスで起こる神経伝達物質の放出に対してFbxo45が抑制的に作用していることを示唆している。一方、シナプス前膜において神経伝達物質の放出に関わるMunc13-1とFbxo45が結合することがわかった。Fbxo45の強制発現により、Munc13-1のタンパク質レベルがFbxo45発現量依存的に減少し、さらに細胞内での半減期が顕著に短縮した。次に、Fbxo45に対する2種類のsiRNAを作成しloss-of-function実験を行ったところ、Munc13-1の半減期が顕著に延長し、また同siRNAを神経細胞に導入したところ、mEPSC頻度の増加が観察された。以上の結果から、Fbxo45はMunc13-1に結合し、その分解を促進することによりシナプスにおける神経伝達物質の放出を抑制することが明らかになった。Fbxo45ノックアウトマウスは、呼吸困難により出生直後に死亡するが、詳細な組織学的解析により、このマウスでは横隔膜上の神経筋接合部のシナプス形成・分岐に異常があることがわかった。この結果から、Fbxo45が胎生期におけるシナプス形成にも関与することが示唆された。
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J Biol Chem. 285
ページ: 3840-3849
Mol Cell Biol. 29
ページ: 3529-3543