我々は、以前、膵β細胞特異的ATG7ノックアウトマウスを作製し、そのphenotypeを解析した。その結果、膵β細胞におけるオートファジー機構の破綻が1)ブドウ糖応答性インスリン分泌機構の異常および、2)インスリン抵抗性を代償するための膵β細胞容積増加機構の破綻を誘導し、2型糖尿病における膵β細胞異常に酷似したphenotypeを示すことを見出した(Ebato C. et al Cell Metabolsim 2008)。本年度は、さらに、糖尿病とオートファジーとの関連を明確にする目的で実験を行っている。現在までの検討結果は以下のとおりである。 1)膵β細胞における遊離脂肪酸応答性オートファジー機構の解明。 現在、長寿命蛋白の半減期のデータやLC3蛋白の挙動から鑑みると遊離脂肪酸はオートファジーを促進していることを示唆するデータが得られつつある。さらに、各種阻害剤を用いた検討では、遊離脂肪酸応答性のオートファジー促進現象には、JNKの活性化が関与している可能性がある。一方で、遊離脂肪酸負荷によりp62の蓄積も同時に認められ、遊離脂肪酸がオートファジーを抑制している可能性も考えられる。 2)膵β細胞におけるp62蛋白蓄積の病態生理学的意義 膵β細胞特異的ATG7ノックアウトマウスにおいては、p62の蓄積が認められた。この病態生理学的意義を検討する目的で、膵β細胞特異的ATG7とp62のダブルノックアウトマウスを作成している。現在、マウスの掛けあわせを順調に行っている。
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