我々は、以前から膵β細胞におけるオートファジーの意義に関して研究を展開してきた。その過程で、インスリン抵抗性状態下の膵β細胞では、オートファジーが誘導されていることが明らかになった。その機序としてインスリン抵抗性により増加する遊離脂肪酸が膵β細胞でのオートファジー誘導に関与する可能性に関して詳細な検討を行った。 膵β細胞株INS-1に遊離脂肪酸であるパルミチン酸を添加すると長寿命蛋白質の半減期が低下し、この遊離脂肪酸応答性の長寿命蛋白質の半減期の低下はATG7のノックダウンによって抑制されること。INS-1に遊離脂肪酸を添加するとLC3蛋白のtype1からtype2への変換が促進されることが明らかになった。このことから、遊離脂肪酸はオートファジーを促進していることが示唆された。この現象は、JNKの阻害剤で抑制されることから、遊離脂肪酸によるJNKの活性化がこの機序に関与している可能性が示唆された。さらに、JNKを活性化させる因子としてPKRが知られているが、遊離脂肪酸によりPKRの活性化が確認されたため、膵β細胞においては、遊離脂肪酸-PKRの活性化-JNKの活性化-オートファジーの誘導という機序が存在することが示唆された。
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