乳癌の化学療法感受性を左右するBRCA1のE3活性の役割を解析した結果以下の結果を得た。(1)NPM1:Thr199がリン酸化したNPM1がRNF8、Ubc13、ユビキチン鎖依存的に放射線照射後の核内foci(DNA損傷部位)に集積した。Venus蛍光タンパクのN末端を結合させたBARD1とC末端を結合させたNPM1を発現させた細胞は放射線照射後に蛍光核内fociがBRCA1蛍光免疫染色と共局在に検出され、DNA損傷部位でBRCA1/BARD1/NPM1が会合していることが判明した。In vitroにてThr199リン酸化NPM1がLys63結合型ポリユビキチン鎖に特異的に結合し、この結合にはNPM1の酸性ドメイン(A3)、既知のUIM(ubiquitin interacting motif)に類似したドメイン、さらにリン酸化が必須であることがBIAcore解析から判明した。siRNAによりNPM1の発現を抑制した細胞に野生型NPM1あるいは非リン酸化型変異であるT199A-NPM1を発現する細胞を用いてDNA損傷応答を解析した結果非リン酸化型ではBRCA1やRAD51の損傷部位からの消失が顕著に遅れることがわかった。(2)BAP1:BAP1もやはりDNA損傷部位に集積する結果を得た。また、細胞分裂後期にクロマチンに集積することがわかった。(3)BRCA1のE3活性と薬剤感受性:活性を死活させた変異体を用いた解析でDNA損傷の種類によって修復に活性が必要なものと必要のないものがあることが判明した。
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