新規ユビキチン結合ドメインUBZ(Ub-binding zinc finger)は8つのグループからなるファミリーを形成する。UBZファミリーのうちタイプ3とタイプ4のグループはDNA修復に関与するタンパク質に見出される。一方、タイプ1およびタイプ5のグループは、転写因子NF-κBの活性制御に関与するタンパク質の中に見出される。本研究ではこれらのDNA修復と転写制御に関わるUBZドメインと種々のユビキチン鎖との相互作用の特異性を解析し、結晶構造解析によりそれらのユビキチン鎖結合特異性の違いを分子レベルで解明することを目的とする。 UBZドメインはいずれも30アミノ酸程度の短い配列のため、結晶化が困難であった。そこで平成21年度に結晶成長を助けるために緑色蛍光タンパク質(GFP)をタグとして付加した状態での精製・結晶化を検討したところ、タイプ1に属するTAX1BP1のUBZドメインについて、GFPと融合させた状態での結晶化に成功し、構造解析を行うことができた。平成22年度はGFP融合法を他のUBZドメインに適用し、GFP-UBZ融合タンパク質単独での結晶化ならびにユビキチンとの共結晶化を試みた。その結果タイプ4に属するWrnip1のUBZドメインのGFP融合タンパク質とユビキチンの複合体の結晶を得ることに成功した。これまでpolηおよびNEMOのUBZドメインについてはNMR構造が報告されており、そのC末端のヘリックスがユビキチンと結合することが示唆されていた。しかしながら今回のGFP融合法を用いたWrnip1のUBZドメインとユビキチンとの複合体の結晶構造解析の結果、ユビキチンはpolηやNEMOのUBZドメインの予想されていた結合面とは全く異なる新しい面で結合していた。
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