研究概要 |
本年度の研究課題は,主に蛍光相関分光法(FCS)および蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いて生細胞内のプロテアソーム複合体の拡散定数と絶対濃度を決定することである。まず、全プロテアソームタンパク質のうち,複合体を形成している割合とその絶対数,そして核内と細胞質でこれらは異なるのかについて解析した。詳細は以下の通りである。 1. プロテアソームサブユニット蛍光タンパク質融合株のFCS, FCCS測定の最適化 FCS並びにFCCS解析に適切な蛍光タンパク質としてはGFP並びにmCherryの他mKateも応用可能なことが分かった。これらの蛍光蛋白質の性質分析なども行ない、コンフォカル顕微鏡観察を始め、FCSとFCCS測定条件をそれぞれ検討しながら安定且つ効率良く計測する実験条件を確定した。CP-,lid-,base-GFP株を作製してFCS測定を行なった結果、それぞれの細胞内おける濃度が100~200nM範囲内であることが分かった。また動態解析から、それぞれのタンパク質の細胞内(細胞質と核〉動態は26S複合体の分子量から予想される動態とそれよりはるかに遅い動態が共存していることが示唆された。 2. プロテアソーム系関連遺伝子の蛍光タンパク質融合株ミニライブラリーの作出とFCCS計測 蛍光タンパク質融合の最適化をプロテアソームサブユニットについて行ない緑と赤の2色の蛍光タンパク質融合株を作出した。作製した株について表現形や精製プロテアソームの活性などを指標に評価した。それから得られた細胞株をFCCS解析し、CPとlidは細胞内の細胞質と核内両方においてそれぞれ強く相互作用していることが分かった。一方,プロテアソームの核移行に欠損を示すインポーティン変異srpl-49株を作製し、計測を行なった結果、細胞質においてCPとlidは野生型の株と同様強く結合していることが分かった。
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