研究概要 |
本年度の研究課題は,主に蛍光相関分光法(FCS)および蛍光相互相関分光法(FCCS)を用いて生細胞内のプロテアソーム複合体の状態と会合の場(細胞質と核との比較)を明らかにすることである。そのため、変異株と阻害剤を用いて生理的条件を変えながら、26S複合体の会合と動態の状態を解析した。詳細は以下の通りである。 1.蛍光蛋白質融合株並びに薬剤感受性株(δpdr)を用いた薬剤によるプロテアソームの質的・量的変化の追跡 細胞内における26Sの遅い拡散成分の原因を調べるため(H21年度研究実績報告書参照)、蛋白質分解、細胞骨格、転写活性、脱アセチル化を阻害する薬剤をそれぞれ処理した細胞を用いて遅い拡散成分の変化を追跡した。その結果、蛋白質分解阻害剤(MG132)特異的に遅い拡散成分の割合が大幅に減ることを見出した。それに対して細胞骨格阻害については変化が見られなかった。 2.プロテアソームの会合の場と核移行 FCCS解析によりCPとlid(CPとBase)は細胞質と核内両方においてそれぞれ強く結合していることが明らかになり、サブユニットは殆どが26S複合体として存在していることが示唆された。一方,プロテアソームの核移行に欠損を示すインポーティン変異株(srpl-49)においても細胞質ではCPとlid(CPとBase)が野生型の株と同様強く結合していることが分かった。さらに、サブユニット融合型26Sプロテアソームを発現する変異株を用いた実験においても野生株と同様な局在を示した。以上の細胞計測結果から26Sプロテアソームは生細胞において細胞質で26Sとして完成し、そのまま核膜を通過できると言った新知見が示唆された。
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