研究概要 |
細胞外pHの低下は、周辺の組織や細胞の機能を変化させるが、そのメカニズムの詳細は不明である。OGR1、GPR4、TDGA8、G2Aは細胞外プロトンを感知するユニークなGPCR群であることが我々のものを含め、報告されている(OGR1ファミリー)。我々は細胞外pHの低下に伴う細胞応答のモーダルシフトに、このファミリーが関与するものと考えている。本年は、1.ヒトGPR4の変異体を作成することにより、多様なシグナル系に情報を伝達するGPR4の活性化機構を調べた。GPR4を過剰発現させると、細胞外のpH変化に伴い、cAMP産生(Gs)、SREプロモーターの活性化(G13)、イノシトールリン酸の蓄積(Gq)がおこる。そこで本年度は、各々のシグナル系の活性化につながるGPR4内の細胞外に存在する8個のヒスチジンをそれぞれフェニルアラニンに置換した変異体を用い、各シグナル系を活性化する共通の3個のヒスチジンを同定した。2.ヒト血管平滑筋細胞におけるプロトン感知性GPCRとLPA間のクロストークの解析を行った。ヒト大動脈血管平滑筋細胞では細胞外pH低下に伴い、COX-2の発現上昇と、PGI2の産生増加が観察される。また、LPAが単独ではPGI2の産生をほとんど惹起しないが、pHの低下に伴う,PGI2の産生を大幅に増強するモーダルシフトを示す。本年度はこのモーダルシフトに関与する受容体を同定した(OGR1とLPA1)。またこのLPA作用はpH低下に伴うCOX-2発現以外にもMKP1(MAPK phosphatasel)など、他の遺伝子発現においても観察されることが明らかになった。3.プロトン感知性GPCR欠損マウスの関節、骨組織骨関連細胞の機能解析は継続する予定である。
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