ダイオキシン受容体(AhR)のモーダルシフト機構についてはこれまで不明である。特に、AhRがユビキチンリガーゼ活性を有することを見出したため、E3活性と転写活性とのモーダルシフト機構の解明を試みた。 まず細胞内シグナル伝達経路の下流でAhRの機能が制御される可能性を検討した。その結果、PKAシグナル依存的にAhRの転写活性が抑制され、逆にE3活性が促進されることを見出した。すなわち、PKAはAhRのモーダルシフトを誘導することが明らかとなった。現在、AhRにおける翻訳後修飾によってこのモーダルシフトが惹起される可能性を検討している。 次に、AhRのE3活性が細胞周期依存的であることを見出した。すなわち、AhRのE3活性、およびE3複合体形成は、S期に増強し、M期に減弱することを見出した。この活性制御は、複合体会合レベルで制御されていることを見出した。このE3活性に一致して、AhRによる性ホルモンかく乱作用は、細胞周期のステージによってモーダルシフトすることが明らかとなった。さらに最近、AhRによるER機能制御が細胞周期によってモーダルシフトし、E3活性優勢であるS期においては、ERの分解が促進され、エストロゲンシグナルが抑制されることが明らかとなった。 以上より、AhRの活性のモーダルシフト機構の一端を明らかにした。
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