公募研究
色覚に種内変異があることが明確にわかっているのは、中南米に生息する霊長類である新世界ザル類、当の我々ヒト自身、そして魚類のグッピー(Poecilia reticulata)のみである。これらは共通にM/LWSタイプのオプシンに遺伝的多型が存在するが、特にヒトとグッピーに関してはその種内変異の程度、起源、自然選択との関係などに関して未解明な点が多く残されている。私は本州日本人、アイヌ民族、狩猟採集民であるフィリピンネグリト集団、ヨーロッパ系、アフリカ系、先住アメリカ人についてゲノムDNAの集団サンプルを分与あるいは購入により入手した。本州日本人、ネグリト集団、ハウザ(アフリカ)人、デンマーク人を対象として、L及びMオプシン遺伝子のイントロンを含む部分塩基配列を解析した。その結果どの集団にもLとMのキメラ遺伝子を確認した。興味深いことにアフリカ、ヨーロッパ、アジアの集団間で同一のキメラ遺伝子配列が共有されており、現生人類がアフリカを出て地球全域に拡散する以前にLMキメラ遺伝子が起源すると考えられる。今後解析対象個体数を増やし、詳細な検討を行なっていく必要がある。グッピーの赤-緑型錐体視細胞には吸収波長の異なるサブタイプが存在し、その持ち方は個体によって異なる、すなわち光感受性の多型があることが90年代初頭に報告された。しかし、視細胞の多型性の元になる遺伝子レベルの多型性の実体は不明であった。そこで、グッピーの視覚オプシン遺伝子をすべて明らかにし、それらにどのような集団内多様性があるかを調べることにした。これまでに原産国トリニダード島で収集された複数集団及び日本で野生化した集団のゲノムDNAの分与を受け、グッピーに4つものM/LWSタイプオプシン遺伝子座位があり、このうち2座位に高度な多型性があることを見出した。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (20件) 備考 (1件)
Animal Behaviour 77
ページ: 1421-1426
BMC Research Notes 2
ページ: online journals のため論文番号のみ:88
Gene 443
ページ: 170-177
The American Journal of Human Genetics 85
ページ: 528-535
International Journal of Primatology 30
ページ: 753-775
Molecular Biology and Evolution 27
ページ: 453-464
Annals of Human Genetics 74
ページ: 126-136
日経サイエンス 39
ページ: 72-73
比較生理生化学 26
ページ: 110-116
東京大学大学院新領域創成科学研究科広報誌創成 14
ページ: 5
http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura-home.html