研究概要 |
Anabaena Sensory Rhodopsin (ASR)は、光反応過程、光誘起構造変化、情報伝達タンパク質(ASRT)との相互作用が、これまで研究されてきた古細菌型ロドプシンとまったく異なる新奇な光センサー蛋白質である。本研究では、研究代表者が最適化してきた液中で計測可能な全反射赤外分光計測を駆使することにより、生理的条件に近い温度、pH、塩濃度環境下での計測を実現し、ASRと情報伝達タンパク質(ASRT)の光情報伝達過程に伴うタンパク質の構造変化や水素結合変化を明らかにすることを目的としている。さらに、内向きプロトンポンプ活性を示すD217E変異体の特性を生かし、そのC末端にK^+チャネルであるKcsAを遺伝子工学的手法により連結させ、光応答性K^+チャネルを創成することを目指す。 平成21年度は以下のような研究成果を得た。1.内向きプロトンポンプ活性を示すD217E変異体について、プロトン輸送活性および光誘起赤外差スペクトルの計測を行い、学術論文にまとめた(A.Kawanabe et al., J.Am.Chem.Soc.131,16439-16444)。2.べん毛モーター蛋白質を構成するPomA/PomB蛋白質に対して、全反射赤外分光計測を行い、Na^+イオンの透過経路の1つとしてAsp24を同定した(Y.Sudo et al., Biochemistry 48,10136-10145)。3.KcsAに対しても各種アルカリ金属イオンとの相互作用を全反射赤外分光計測での解析を開始し、イオン種によって異なる差スペクトルを得ることに成功し、第47回生物物理学会年回で発表した(Y.Asai et al., The 47th Annual Meeting of the Biophysical Society of Japan)。
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