交付申請書に記載の研究計画に沿って、無脊椎動物タイプのロドプシン類における量子収率の測定を試みた。その際、無脊椎動物タイプのロドプシン類の光反応が脊椎動物タイプのものとは異なることから、光感受性測定におけるどのような方法が最適かを検討しながら研究を遂行した。 1. 可視光感受性ロドプシン類における光感受性 無脊椎動物タイプのロドプシン類は、脊椎動物タイプとは違って、光照射により生成する中間体(G蛋白質活性化状態)が安定であり、またその吸収スペクトルの極大は可視域にあり、暗状態のスペクトルと重なる。したがって、このロドプシンにおける光感受性の測定には脊椎動物タイプのロドプシン類とは異なる方法を用いる必要がある。そこで、3つの方法を検討した結果、最終的にはロドプシンと中間体の間に光可逆反応のあることを利用して、異なる波長で照射した場合に光定常状態が生成するまでのフォトン数から求める方法が最も信頼性があると結論した。この方法を用いて、ナメクジウオロドプシンの光感受性を測定したところ、脊椎動物タイプのロドプシン類と同程度であることがわかった。したがって、無脊椎動物タイプのロドプシン類には、E113が関与しない光異性化促進メカニズムが存在すると考えられた。 2. 紫外光感受性ロドプシン類における光感受性 E113をもつが無脊椎動物タイプの光反応をする紫外光感受性ロドプシン類であるヤツメウナギパラピノプシンを用いて光感受性の測定を行った。その結果、脊椎動物タイプのロドプシン類と同程度であることが明らかとなった。一方、E113を持たない紫外光感受性ロドプシン類については、培養細胞系での発現が難しいため、現在、光感受性についての定性的なデータしか得られていない。現在2種のロドプシン類について検討したところ、一方は、光感受性が脊椎動物タイプと同様であるが、他方は低いという結果が得られている。
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