研究概要 |
すでに申請者らは、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養によって鋤鼻ニューロンにおける鋤鼻受容体V2Rの発現の増大を見出している。しかし、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養はV2Rの誘導に必要なのか、それともV2Rの発現維持に必要なのか不明であった。そこで、共培養時のV2R mRNA発現量の経時的変化をRT-PCR法を用いて検討した。培養副嗅球細胞の調製には胎生19日齢、鋤鼻器の器官培養には胎生15日齢のWistarラットを用いた。共培養の開始は、培養調製から単独で7日間feeder細胞上に培養した鋤鼻器を副嗅球培養細胞(培養5日目)上に移植することで開始した。共培養を開始してから3日目においてV2Rを示すバンドが観察されたが、この発現は共培養(副嗅球存在)の有無には関係なく、ほぼ同レベルで認められた。ところが、共培養を開始してから5、7日目になると、共培養条件下ではV2R mRNAの発現が検出されたが、一方、単独培養条件下ではこれに比べて発現量は著しく減少した。共培養は、鋤鼻器の培養調製から7日間単独で培養して安定させたあと、培養鋤鼻器をfeeder細胞上から副嗅球上に移植することで開始する。このため、共培養開始以前のV2Rの発現を確認する目的で、培養調製から1,3,5,7日後の鋤鼻器での発現を比較したところ、いずれの培養経過日数でもV2R mRNAの発現が認められた。共培養条件下でフグ毒tetrdotoxin(TTX 2μM)を添加し、ニューロンの興奮を阻害した。共培養開始時からTTXを継続添加した共培養14日目において、V2R mRNAの発現量は、単独培養条件下の鋤鼻器と同レベルにまで減少した。以上より、鋤鼻ニューロンにおけるV2Rの発現は副嗅球ニューロンとのシナプスを介した相互作用によって誘導ではなく、維持されていることが示唆される。
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