末梢皮膚に加えられた侵害性の熱および冷刺激は、それぞれTRPV1およびTRPA1受容体によって受容され、脊髄後角に運ばれていると考えられる。今までの研究からこれら脊髄後角にはこばれていると考えられている。今までの研究からこれらの受容体は末梢のみならず中枢側にも 発現しており、その機能については全く不明であった。昨年の研究ではそれぞれの受容体作動薬によってグルタミン酸の放出が増大することを明らかにしてきた。しかしながら、それらの作動薬が中枢側に存在することはなく、また、侵害性の温度閾に脊髄が達することはないと考えられる事から、脊髄内に発現している受容体の機能的役割にっいては全く不明であった。一方、末梢の炎症によってプロスタグランディンやブラジキニン、ATPなどの炎症関連物質が放出され、それらによってTRPV1受容体が感作をうけ、本来刺激温度ではない36度C付近でもTRPV1が活性化されることが明らかにされている。また、炎症時にはCOX2が脊髄後角に発現することが報告されており、これらの物質によって中枢側に発現したTRPV1受容体の感作が惹起される可能性が考えらた。そこで、慢性炎症モデルラットから脊髄スライスに後根を付した標本を作製し、脊髄スライス灌流液の温度を36度Cから上昇させたときにいかなる応答が観察されるかを調べた。その結果、正常ラットでは温度変化によっては自発性EPSCになんら変化は観察されなかったが、炎症ラット脊髄では温度を上昇させるに従い自発性EPSCの頻度が増大した。また、後根誘起のシナプス応答も増大傾向を示した。今後、正常ラットの脊髄から記録を行いプロスタグランディンやブラジキニン存在下に温度を変化させたときの自発性EPSCの変化を明らかにしていく。
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