公募研究
hyl1変異体植物ではmiRNAの蓄積が減少し、葉が細く、その縁が上向きにカールするといった特徴的な表現型を示す。hyl1-2種子をEMS変異原処理し、約38,000個のM2芽生えから表現型が野生型様に復帰した個体をスクリーニングした。複数個体について解析を進めたところ、hyl1抑圧変異の原因は同一遺伝子座にマップされた。また変異対立遺伝子は優性であることがわかった。さらにマップベースクローニング法によって原因遺伝子は1番染色体の上腕端440kb以内に存在することを見出した。さらに、この領域に存在するDCL1遺伝子の1183番日のグアニンがアデニンに置換していた。この変異DCL1遺伝子によってhyl1変異体の表現型が野生型様に復帰したことから、この新規dcl1-13変異が、hyl1変異体を抑圧することが証明された。この新規dcl1-13変異はDCL1のRNAヘリカーゼドメインにおける395番目のグルタミン酸からリシンへとアミノ酸置換(E395K)を引き起こすと思われる。DCL1のヘリカーゼドメインはこれまで機能がほとんど未知であったが、本研究からその重要性が示唆された。さらに興味深いことに本研究により、全生物のDicerタンパク質において初めて優性の変異体が得られた。植物細胞内で発現させたところ、野生型タンパク質は核小体に隣接した顆粒構造に局在するのに対して、このdcl1-13変異タンパク質は核小体周辺に位置することが見いだされた。変異によって、DCLタンパク質自身の局在に関する性質、あるいは局在をもたらす第三のタンパク質との相互作用する能力の変化によって、細胞内における存在様式に変化が起こっていることが明らかとなった。今後さらにHYLの周辺の新規因子について解析を加える。DCL1, HYL1といった遺伝子の変異はメリステム維持に関わることも鑑み、この核小体近くに位置する顆粒構造の、機能について考察を加えていく予定である。
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