研究概要 |
CRM1遺伝子の特徴のうち小花柄の伸長角度・伸長度合いに重点をおき解析した。手法としていずれも二重変異体の解析、Dex処理による誘導系を用いたCRM1/BIG遺伝子の発現上昇と過剰発現、in site解析、を用いて遺伝子間の機能的相互作用を推定した。1-ap1変異体との二重変異体における表現型を再度詳細に検討した。その結果、AP1遺伝子との相互作用による小花柄の最終形態には遺伝子量(Gene Dosage)効果のあることを推定した。2-crm1変異体では、LFY-mRNAが上昇しているので、さらにAP1以外のLFY下流遺伝子につき検討した。BP遺伝子は、単一変異で小花柄の下垂伸長を示す。このbp変異体は、花柄形態の解析・花柄角度の解析・細胞長の解祈によりcrm1変異表現型をさらに強調したものとなっていた。発現解析すると、LFYにより抑制されるすなわちlfy変異でBP-mRNAが上昇していた。BP=KNAT1なのでさらに同属遺伝子KNAT2,6についても解析しLFYがそれらKNAT群を抑制することを示した。以上の結果は、crm表現型発現にLFY-BP経路を重要なものとして関与していることを示した。しかし、bp変異表現型のすべてをcrm1表現型に帰着することはできないので、BP独自の機能があることも示唆した。3-小花柄の伸長とその角度の解析からcrm1表現型の基礎は、以下のように推定した。野生型では小花柄の伸長は当初背軸側が向軸側より大きくなる。その後、向軸側と背軸側の伸長が同程度におさまり、一定の角度に帰着することにより上向きに伸長する。ところがcrm1変異体では、その初期の背軸側成長が向軸側と同程度でしかも野生型よりも伸長低下していた。そこで、向軸側と背軸側の発現マーカーREV,FIL各遺伝子を調べた。その結果、crm1変異体ではREV遺伝子が全体に発現しているように見え、crm1変異体花柄のこの「下偏成長」の元は花柄基部の全体的向軸化によって背軸側の伸長が抑えられたと推定した。
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