冠根の発生に関わる新たな遺伝子を明らかにするために、日本型イネ由来であり、冠根数が著しく減少するcr17変異体とインド型イネkasalathとの交雑F_2集団を用い、マップベースクローニングによりcrl7変異体の原因遺伝子の単離を試みた。その結果、CRL7遺伝子は第6染色体の約13cMに座乗するリボヌクレオシド二リン酸レダクターゼ大サブユニットをコードしていることが判明した。crl7変異体では幼根の分裂組織の維持に異常が見られ、また冠根原基形成時にはその発生の途中段階で分化が停止していた。一方、茎頂や液芽分裂組織は帯化する傾向が認められた。そのため、今後は分裂組織の発生・分化、および維持機構を制御する遣伝子の転写型遺伝子サイレンシング等について解析を進めていきたい。 AP2型転写因子の変異に起因するcrl5変異体は、冠根原基のinitiation自体が進行しないため著しく冠根数が減少する。CRL5過剰発現体の作出を試みた結果、再分化培地ではベクターコントロールに比べ著しく不定根が形成される一方、不定芽形成は抑制されたため、CRLS過剰発現体ではサイトカイニン感受性の低下が示唆された。そこで、サイトカイニンシグナル伝達に関与する遺伝子群の発現解析を行った結果、負の制御因子であるOsRR1などのタイプAレスポンスレギュレーターの発現が野生型にくらべcrl5変異体で低く、逆にCRLS過剰発現体で高い傾向が認められた。したがって、CRL5遺伝子はサイトカイニンシグナルを負に制御することにより、冠根原基のinitiationを促すものと考えられた。
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