植物のRho-type GTPaseであるROPはPIP5Kと共に根毛形成における細胞極性の確立・維持に関わる因子であるとされている。大腸菌発現タンパク質を用いたin vitroのプルダウン解析により、PIP5K3とROP2が直接結合することが示された。また、形質転換シロイヌナズナを用いた系において、YFP-ROP2融合タンパク質とPIP5K3-RFP融合タンパク質が伸長中の根毛の先端で共局在することが確かめられた。一方、構成的活性型であるYFP-carop2とPIP5K3-RFPは伸長極性を失った根毛細胞の細胞膜全体で共局在した。これらのことは、PIP5KとROPの共局在が細胞伸長領城の決定に大きく関わることを裏付けるとともに、根毛細胞におけるそれらの直接の相互作用を強く示唆している。 PLDζ1遺伝子については適当な変異体がないため、細胞形態形成における詳しい機能解析が行われていない。 そこで、形質転換系を用いPLDζ1遺伝子の発現を組織もしくは細胞特異的に抑制する試みが行われた。GL2遺伝子のプロモーターを用いてPLDζ1遺伝子を抑制した結果、トライコームの発生が完全に阻害された。また、根毛細胞特異的な活性を持つEXP7遺伝子のプロ・モーターを用いた場合には、根毛先端伸長における極性の異常が見られた。これらの結果は、これまでの誘導系を用いたPLDζ1遺伝子の機能解析の結果と符合するとともに、PLDζ1の細胞形態形成全般に対する制御的役割を示唆するものである。
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