公募研究
ゼニゴケの胞子から葉状体への発生や切断した葉状体からの再分化過程には光が必要である。この現象は赤色光照射が有効であり、遠赤色光照射によって打ち消された。フィトクロムのRNAi法による抑制系統では光の効果が抑制された。フィトクロムに点変異を導入した恒常活性型ファイトクロムY241H系統は、光に非依存的に再分化が観察された。すなわち、これらの現象に関与する光受容体がフィトクロムであることが示された。ヒストンH2B-蛍光タンパク質RFP融合タンパク質を発現するゼニゴケ系統を作成し、染色体の動態を可視化した。この系統を用いて、初期発生と再分化過程のメリステムの変化を観察した。赤色光照射によって細胞分裂が亢進すること、遠赤色光照射によって抑制されることを観察した。また、フローサイトメトリーを用いた核相の解析によって、赤色光の照射によって1Cの割合が増加すること、フィトクロムRNAi株では2Cの割合が増すこと、恒常活性型フィトクロムを発現する株では光照射に依存せずに1Cの割合が増すことがわかった。細胞の核相が成長段階と光環境で制御されていること、活性型フィトクロムがG2期からM期への進行に正の効果をもつことがわかった。植物の発生を制御するオーキシンのゼニゴケへの添加によって、低濃度では成長促進、高濃度では抑制の効果を示した。無性芽から葉状体の形成の段階でオーキシン極性輸送阻害剤を与えると背腹性の乱れが生じたことより、極性輸送の重要性が示唆された。オーキシン応答性のGH3p-GUSを発現する系統を作出した。この系統のレポーター遺伝子発現が、オーキシン特異的に応答することがわかった。組織化学的に発現を検出したところ、杯状体底部、雌雄の生殖器官、胞子体などで強い染色が認められた。光やホルモン応答の研究にゼニゴケは有用な材料である。
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