シロイヌナズナRKD4遺伝子の欠損変異体(rkd4)では、胚におけるパターン形成に異常が見られ、高頻度に根端メリステムを欠失する。これまでの解析により、RKD4がオーキシンに依存したパターン形成機構の上流で機能することが示唆されている。本研究は、胚発生におけるRKD4タンパク質の機能を明らかにすることを目的とする。RKD4は転写因子と推定されるが、それを支持する実験データは報告されていない。RKD4の細胞内局在を調べるために、RKD4:GFP融合タンパク質をRKD4プロモーターの制御化で発現させたが、rkd4の表現型は相補されるもののGFP蛍光は観察されなかった。RKD4:GFPを植物体の根や胚で過剰発現する形質転換体においても、やはりGFP蛍光は観察されなかった。一方、RKD4:GFPをタマネギの表皮細胞やシロイヌナズナの培養細胞で一過的に発現させると、核においてGFP蛍光が観察された。また、RKD4の様々な領域とGAL4のDNA結合ドメインとの融合タンパク質を酵母で発現させ、レポーター遺伝子の発現を調べた結果、RKD4のアミノ末端側に転写活性化能があることが明らかとなった。これらの結果は、RKD4が当初の推定通り、転写活性化因子として機能することを支持する。また、RKD4タンパク質の不安定性や翻訳効率の低さも示唆される。RKD4の下流因子を同定するため、rkd4変異体と野生型植物の胚珠からRNAを抽出し、マイクロアレイにより転写プロファイルを比較した。またDEX誘導型RKD4過剰発現体を用いて、短時間の誘導後の転写プロファイルをコントロールと比較した。その結果、いくつかの転写因子の他、オーキシン生合成酵素をコードする遺伝子などが下流因子の候補として同定された。
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